英国女性旅行家イザベラ・バードの人物像
■翼を持った女-イザベラ・バード
“翼をもった女というのは、芥川賞作家で、イザベラ・バードにいたく惹かれた加藤幸子さんの表現であり、その名が一冊の本の題名にもなりました。。バードはまさにBirdですし、バードの生涯を通じての行動からしても、まことに見事な表現であると思われます。この人ほど”翼をもった”人は少ないでしょう。少ないどころか、女性としては稀有な存在です。
イザベラ・バードは、1831年に英国ヨークシャーの牧師の長女として生まれました。彼女は、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイを旅行し、因習にとらわれない自由闊達な女性でした。
今から約140年前の1878年(明治11年)、47歳の時に日本に訪れ、彼女はこの国でまだ外国人に知られていない地方を探検しようと考え、通訳と身の回りの世話係をする日本の青年伊藤一人を連れ、日光、東北、北海道をさかのぼり函館、森町、室蘭、白老を巡り、佐瑠太(現日高町富川)から奥地の平取アイヌ部落に向かいました。
「日本奥地紀行」と訳されている”Unbeaten Tracks in Japan”において、イザベラ・バードは北海道の様々な自然を描写しました。彼女は専門領域を持った自然科学分野の人でなかったですし、もちろん、まだ情報の十分でなかった19世紀中頃の日本であり、その記述は必ずしも正確ではありません。その時期には、さまざまな外国人が、教師として、あるいは技術者として北海道を訪れていますが、その自然を研究者としてではなく、旅行者として、しかも極めて高い観察眼をもって描いたのはこの女性旅行者ひとりであるといえます。